長野県、桔梗ヶ原ワインバレーの荒廃農地をブドウ畑へ
長野県に4つあるワイン特区のひとつである桔梗ヶ原ワインバレー内にある塩尻市は長野県のほぼ中央に位置し、標高700〜900メートルの台地に位置する。
少ない降雨量、冷涼な気候と昼夜の寒暖差、水はけのよい火山性土壌が葡萄栽培に適していることから明治初期からワイン用葡萄栽培が盛んであり、今日ではとりわけ桔梗ヶ原産のメルロが有名。
塩尻市内を流れる一級河川である奈良井川沿いの洗馬(せば)の地に惚れ込んだ坪田満博さんが一から興したのがヴォータノワイン(坪田さんの愛称である、ぼたのワインが名の由来)。
ジュラ紀地層の木曽・飛騨山系から流れ出た奈良井川のミネラルをたっぷり含んだ川が運んだ大小石だらけのテロワールが優れたワインを産み出すことに確信を持ち、かつてリンゴ畑であった河川敷の荒廃農地を葡萄畑へ開墾。
自社畑1.3haと僅かの買い葡萄から年間約8,000本程のワインを造る。
栽培を曽我貴彦氏、醸造をブルース・ガットラブ氏に師事した経歴
神奈川県茅ケ崎出身で元々建築設計士であった坪田さんはワイン造りを第二のキャリアにすることを決心。
2002年当時53歳にてワイン造りを学ぶ為にココ・ファーム・ワイナリーの門を叩き、栽培を曽我貴彦さん(現ドメーヌ・タカヒコ)、醸造をブルース・ガットラブさん(現10Rワイナリー)という今を時めく日本ワイン界のスター生産者に教わったという異色の経歴を持つ。
2004年に葡萄を植樹、委託醸造の期間を経て2012年から自家醸造を開始。「良い土壌、良いぶどうがあれば良いワインが出来る。
すべては葡萄の力に任せる」と語る坪田さんのこだわりは葡萄が完全に完熟するまでひたすら待つこと。
葡萄樹の樹齢が約20年に達した今、辿り着いた洗馬産ワインの特徴は「ヨード感、ミネラル感」だと語る。
無肥料、減農薬の栽培、野生酵母によるシンプルな醸造で無濾過、極少量の酸化防止剤添加による坪田さんの手掛けるワインは独特な滑らかさと艶やかなニュアンスと旨味が感じられ、滋味あふれる。
特記すべきは抜栓後の生命力であり、「完熟ぶどうによるワインは酸化しにくく、抜栓後は10日位掛けて味わいの変化を楽しんでもらいたい」と語る。